AIに貼る前の個人情報マスキング やり方と限界
守秘工房 ・ 最終更新 2026-10-12
このページの要点
・マスキングは、AIに渡す情報を減らすための手段です。会社や事務所のルール、取引先との約束の代わりにはなりません。AIの利用が禁止されているなら、使わないのが先です。
・やり方は「Wordなどの置換」「ブラウザの中で動くマスキングツール」「会社向けのサービス」の3つ。どれでも、AIに貼る前に目で確かめることが欠かせません。
・名前を記号にしても、文の中身から人や会社が分かってしまうことがあります。
マスキングとは
ここでいうマスキング(伏せ字)は、文章の中の氏名・会社名・住所・電話番号などを、【氏名1】のような記号に置き換えてから、ChatGPT・Claude・Gemini などのAIに貼ることです。AIは記号のまま文章を読み、返事も記号のまま書きます。返事の記号を元の言葉に戻せば、そのまま仕事に使えます。
なお、個人情報保護法には「仮名加工情報」「匿名加工情報」という、作り方や扱いが決められた言葉があります。このページで説明する置き換えは、それらの手続きとは別のもので、置き換えたから法律上の扱いが変わる、というものではありません。
例:置き換える前と後
架空の取引先とのメールを、守秘マスクで置き換えた結果です(実際にツールに通した出力そのままです)。
置き換える前
田中 一郎 様 いつもお世話になっております。株式会社サンプル商事の鈴木です。 先日ご相談いただいた件、田中様のご希望に沿う形で見積もりを作りました。 来週、東京都千代田区丸の内1-2-3の事務所へお持ちします。 ―― 株式会社サンプル商事 営業部 鈴木 花子 電話 090-1234-5678
AIに貼る文章(置き換えた後)
【氏名1】 様 いつもお世話になっております。【会社名1】の【氏名2】です。 先日ご相談いただいた件、【氏名3】様のご希望に沿う形で見積もりを作りました。 来週、【住所1】の事務所へお持ちします。 ―― 【会社名1】 営業部 【氏名4】 電話 【電話1】
宛名に「田中 一郎」と出てきたので、本文の「田中様」も隠れています。同じ会社名は、何度出てきても同じ【会社名1】になります。
AIの返事を貼ると、元に戻る
【氏名1】様 → 田中 一郎様 【氏名2】様 → 鈴木様
やり方1:Wordやメモ帳の「置換」
Word なら Ctrl+H(置換)で、「田中 一郎」を「Aさん」のように置き換えていく方法です。
- よい所:文章がパソコンの外に出ません。特別なソフトも要りません。
- 気をつける所:「田中 一郎」を置き換えても、本文の「田中様」「一郎さん」、空白の無い「田中一郎」は残ります。書き方の違いを全部自分で探す必要があり、メールのやり取りが長いほど漏れやすくなります。
- AIの返事を元に戻すには、「Aさん=田中 一郎」のような対応表を自分で作って、逆向きに置き換えます。
やり方2:ブラウザの中で動くマスキングツール
文章を貼ると、名前や番号を見つけて記号にしてくれるツールです(ウェブサイトとして使うものや、ブラウザの拡張機能など)。守秘マスクもこの形です。
- よい所:見落としやすい書き方の違い(空白の有無、全角と半角、名字だけの呼び方)までまとめて置き換えられます。元に戻すのも自動です。
- 気をつける所:「Webのマスキングサービス」の中には、貼った文章を事業者のサーバーに送って処理するものもあります。東京弁護士会の会報の特集記事(LIBRA 2026年7・8月号)でも、こうしたサービスは情報がサーバーに送られるため、執筆時点では Word などの置換で手作業する方が安全ではないか、という見方が示されています。使う前に、次の章の方法で「本当に送っていないか」を確かめてください。
やり方3:会社向けのマスキング・情報漏えい対策サービス
会社でAIを正式に導入している場合、入力を自動で検査したり、置き換えたりする仕組みが入っていることがあります。会社で用意されているなら、まずそれを使い、社内のルールに従ってください。
「文章を送っていない」を自分で確かめる方法
「通信しません」と書いてあっても、確かめられるなら確かめるのが安全です。専門の知識が無くてもできる方法を2つ紹介します。
1. インターネットを切って使ってみる
使っているマスキングツールのページを開いたあと、Wi-Fi を切る(ケーブルを抜く)。それでも置き換えが動けば、少なくとも置き換えのために文章を送っている作りではありません。
2. ブラウザの「ネットワーク」の記録を見る
- Chrome か Edge でマスキングツールのページを開き、F12 キーを押す(開発者ツールが開きます)
- 上のタブから「ネットワーク」(Network)を選ぶ
- 文章を貼って置き換える
- 記録の一覧に、新しい行が増えないかを見る。増えなければ、どこにも送っていません
守秘マスクは、ページの中に「外と通信しない」設定を入れてあり、上の2つの方法で確かめられます。
【氏名1】のように番号を振る理由
「○○」や「××」で全部を伏せると、AIは誰が誰だか分からなくなり、返事がおかしくなります。人ごと・会社ごとに番号を分けると、AIは「【氏名1】と【氏名2】は別の人」と分かったうえで文章を読めます。返事の中の記号も、番号から元の言葉に戻せます。
置き換えても防げないこと
| 防げないこと | 例と対策 |
|---|---|
| 文の中身から分かってしまう | 「○○市で一軒だけの和菓子店」「先月の大型の受注」のように、名前が無くても特定できる書き方。業種・地域・日付・金額が重なると特に分かりやすくなります。要らない部分は消すか、ぼかします。 |
| 自動では見つけられない言葉 | あだ名、ひらがなだけの名前、1文字の名字、社内だけで通じる略称など。貼る前に目で確かめ、残っていれば手で選んで隠します。 |
| 画像や添付ファイルの中 | スクリーンショットや写真の中の文字は置き換えられません。AIに画像を渡すときは別に考える必要があります。 |
| 元に戻すための対応表 | 「【氏名1】=田中 一郎」の表そのものは、元の情報です。外に出さないようにします(守秘マスクではブラウザの外に出ません)。 |
| AIの返事の誤り | 置き換えても、AIが間違えることは減りません。返事は必ず読んで確かめます。 |
| AI側の設定 | 入力をAIの学習に使わない設定や、会社向けプランの契約内容は、置き換えとは別に確認します。 |
公的な案内
個人情報保護委員会は、生成AIサービスについての注意喚起を出しています(2023年6月2日)。事業者として使う場合は、個人情報を入力することが利用目的の範囲内かを確かめること、入力した情報がAIの学習などに使われないかを確かめることなどが挙げられています。原文をご確認ください。
個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」
このページは、置き換えのやり方を説明するもので、法律や税務の判断はしていません。仕事で使ってよいかどうかは、所属先のルール・取引先との約束・専門家の判断に従ってください。
守秘マスクを試す(無料)
守秘マスクは、ブラウザの中だけで動く、無料のマスキングツールです。インストールも登録もいりません。
- 氏名・会社名・住所・電話・メール・個人番号・口座番号などを自動で記号にします
- メールの宛名や署名に一度出てきた名前を覚え、本文の名字だけの呼び方まで隠します
- 隠れなかった言葉は選んで隠せ、隠しすぎは戻せます
- AIの返事を貼ると、記号を元の言葉に戻します
- 通信しません。上の方法で確かめられます
すべての個人情報を必ず見つけられるわけではありません。AIに貼る前に、必ず目で確かめてください。